神山町 kamiyama-cho

神山はいま

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移り住んできた孫ターン夫婦の、日々の暮らしと神山での繋がり
「地域と関わる面白さを感じている」

令和元年11月30日

上分に暮らす小坂田 達(おさかだ とおる)さんと美香(みか)さん、そして娘の祈穂(きほ)ちゃん。達さんは『徳島中央森林組合』で林業の仕事を、美香さんは助産師と上分地区で集落支援員の仕事をされています。都市部から神山に移り住んで4年目。暮らしの環境や考え方にも、少しずつ変化が出てきたとおふたりは話します。取り組みたいことも含め、お話を聞かせていただきました。

すーっと息が抜けるような感じがした

ー神山に来た経緯を教えてください。

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達さん(以下 達) 僕の出身は愛知県の岡崎市なんですけれど、母親の実家が神山なんですよね。今も自分たちの家から車で10分くらい行った所に、おじいちゃんとおばあちゃんが暮らしていて、それがご縁でこっちに来ました。

美香さん(以下 美香) そもそもは、達さんとお付き合いする前に、私が達さんのご両親と3人で神山に来たのがきっかけなんです(笑)。その頃は、都会での働き方や通勤ラッシュとかがとにかくしんどい時期で。
でも、神山に来たら、時間の流れや空気感がとても気持ち良かったんですよね。

空もすごく綺麗で、なんか上手く言葉にならないんですけど、すーっと息が抜けるような感じがしたというか。自然と、神山で暮らしてみたい、という気持ちになったんです。田舎で過ごしたいという思いは、昔から漠然とあったんでしょうね。

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あと神山の人たちは、皆さん生活する上で自分たちの手でお野菜を育てたり、日々使う道具を作ったりすることが本当に多いですよね。私が今まで暮らしていた環境では、それが当たり前じゃなくって。

そういう生きていく上での知恵や技みたいなものを、神山の人たちが元気なうちに受け継いで、それをまた自分の子ども世代にも繋げたら良いな、というか。
今、教えてもらわなかったら、なくなっていってしまう寂しさや焦りがあるんだと思います。

ー達さんは神山に住みたいという気持ちはあったんですか?

 いや、特になかったです。でも、田舎で暮らしたいっていうのは聞いていたし、神山だったら全く知らない土地でもないし、おじいちゃんおばあちゃんもいたので、まあ良いかなって。神山じゃなかったらもっと考えてたいたかもしれないけど、割とすんなり。でも、自分の親は「何でそんな遠い所に行くん?」って言ってましたけどね(笑)。

ー仕事面での不安などはありませんでしたか?

 元々、妻の方は手に職があるので、問題は僕自身がどうするかっていう話だったんですよね。けど、そんなに選り好みしなければ仕事はあるだろうと。ただ、どうせなら町内で仕事をしたいとは、神山に来る前から思っていたんですよ。せっかく引っ越してきたのに、わざわざ徳島市内に出て働くのもどうなんだろうって。この町に自分を還元したいじゃないですけど、そういう思いはありました。

それで、ばあちゃんに今の組合の専務を紹介してもらい、林業の話を聞いてるうちに興味も湧いてきて。ちょうど『とくしま林業アカデミー』が開講するときで、そういうタイミングとかもちょうど良かったんですよね。なので、仕事を探す上でめちゃくちゃ深刻に心配したことはなく、トントン拍子に決まっていきました。

※とくしま林業アカデミー・・・ 徳島県の林業の即戦力を育てるため、林業の知識や技術を学ぶ研修機関。公益社団法人徳島森林づくり推進機構が運営している。

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達さんのお仕事の様子(小坂田さん提供)。

仕事自体は色々と大変なことはありますけど、楽しいです。単純に自然の中で体を動かせるっていう爽快感もありますし、現状、中山間地域が抱える森林の問題に、少しでも貢献できるというやりがいも感じています。愛知にいたときは、林業なんて考えたこともなかったんですけどね。神山に来てなかったら、間違いなく出会っていなかった仕事だと思います。

ー実際の暮らしはいかがでしょう。

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美香 神山に来て、4年目だっけ?

 そうだね。日々の生活は結構充実していますね。薪割りして薪でお風呂沸かすのとか、「水が出ない~!」とか言いながら水場で試行錯誤して修理するのとか、大変だけど楽しい(笑)。都会ではできない暮らしができていますよね。

美香 暮らしていて、気持ちが良いです。不便なことも勿論あるんですけど、別に便利を求めてこの町には来てないので。”何もかもが揃ってない”ということ自体が、私たちにはすごく贅沢だなあって思っていて。神山に来て、本当に良かったです。

神山を出ようとは、1ミクロンも思わない

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上分地区の集落支援員として働く美香さん(小坂田さん提供)。

ー美香さんは、上分地区の集落支援員としても働かれていますね。

美香 はい。上分の皆さんが楽しく暮らせるように、生活状況やどんな困りごとがあるかなど、各家庭を訪問してヒアリングするのが主な業務です。こんな所にお家があるんだっていう発見や、昔の集落の話も聞かせてもらえて、充実した仕事ですね。

元々、私は都会に疲れて神山にやってきたので、どちらかというとひっそりと暮らしたかったんですよね。なので、ご近所付き合いとかがあまりない生活をしていたんですよ。
でも、支援員として色々な場所を訪問するようになって、多くの人と関わるようなりました。妊娠してるときも、散歩とかしてたら地域の人が声をかけてくれたりもして。そういうのもありがたかったです。

逆に今は、自分たちが住んでいる家がポツンと一軒離れてるので、深いご近所付き合いとかもないのが、ちょっと寂しいって思うようになりました(笑)。地域と関わる面白さみたいなものを、最近は感じています。

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ー今後、取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

美香 助産師として開業届けを一応出していて、訪問という形で少しずつ仕事をさせていただいています。自分自身も授乳を1年間経験したんですが、困ったときに相談する相手が近くにいなかったんですよね。結局、前に勤めていた先生の所に電話していたんですけど。

で、神山のお母さんたちと話をしていたら、徳島市内まで授乳のことで相談に行ってる人も多いみたいで、「もっと早く開業して欲しかった」という声もちょくちょく聞いたんです。それで、少しでも町内のお母さんの助けになれば良いなと思い、届けを出しました。
子どもを産んでからの1年間って、すごい濃いじゃないですか。色々と大変なこともあると思うんですけど、振り返ったときに楽しかったと思えるような育児生活を送って欲しいんですよね。

将来的には、皆の生活圏内にある助産院を建物として構えて、人の出入りがある空間を作っていきたいと考えています。ただ、今の家ではそれは難しそうなので、自宅兼助産院に合う物件と出会えたら、引っ越しという選択肢もあるとは思います。

ーそれは町内で?

美香 そうですね。神山を出ようとは1ミクロンも考えていないので(笑)。

 町内であれば、タイミングとか状況によりけりで、引っ越すことはあるかもしれないですよね。そのへんは流動的だと思っています。今の家は人に来てもらうのも大変ですし(笑)。

あと、この子がもう少し大きくなったときに、近所で遊べる友だちがいないと思うので、どうしても一人遊びになっちゃうのは気になる所ではありますよね。

美香 じゃあどうすれば良いだろうっていうところまでは、あまり考えられてないよね。

 なかなか難しい問題です。

町の変化にワクワクしている

ーいまの神山のことはどう見られていますか?

 本当に色んな人がいますよね。来てみて知ったのは、こんなに外から入ってくる人がいるんだということ。自分たちも含めてですけど、それにびっくりしました。普通に外国の方とかが歩いていたりするから。

そういう意味では田舎にいながら面白い交流ができるし、楽しい環境だと思いますね。ただ、僕自身はあんまり社交性もないし、コミュニケーション能力もないので、そんなに関わってはないんですけど(笑)。

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桜花連では大太鼓の担当(小坂田さん提供)。

でも、桜花連に入らせてもらっていたり、地域の消防団に所属させてもらったり、町との関わりも少しずつは増えてきました。これも地元の人が誘ってくれたからなんですけど、そういう意味でも人には助けられていますね(笑)。僕自身だけだとそんなに広がってないかなあ。なんやかんやで、人の出会いには恵まれてるとは思います。

こっちにじいちゃんとばあちゃんがいるのも実は大きい。「あの人の孫か」って気にかけてくれたり、知ってくれてるっていう。必要以上に構えなくても、地域に溶け込んで馴染めたかなっていうのはあるので、それもありがたいことですね。

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上分地区の運動会で(小坂田さん提供)。

美香 元々、自分たちの家族のツテだけで引っ越してきたので、町自体や周囲との関わりもあまりなかったんです。でも、支援員として地域をまわっていると、「神山は昔も賑やかだった」というお話も聞くことができて。今では、地域に住む人みんなが楽しく過ごせるようになれば良いなと、町の変化にワクワクもしています。
少しずつ、地元の人や移り住んできた人の知り合いも増えてきて、とても嬉しいです。これからもどんどん知り合いが増えていって、地域が明るくなっていけば良いなと思っています。

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