神山町 kamiyama-cho

神山はいま

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ひとつ屋根の下で暮らす高校3年間
「寮生は、家族よりも近い存在」

令和4年 3月28日

城西高校神山校生のための少人数制の町営寮「あゆハウス」(https://www.town.kamiyama.lg.jp/josei/support/)が誕生して3年。この春には第一期生4名が卒業とともに巣立ってゆきます。寮生と地域のハウスマスターが日々話し合いながら、自分たちの暮らしをつくるあゆハウスでは、13名(令和4年1月取材時点)の寮生が共同生活をしています。今回は各学年からひとりずつ登場いただき、高校生活を神山で過ごす"地域留学"についてお話を伺いました。まずは、それぞれの自己紹介と神山校に進学することになった経緯から。

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砂川康介(以下、砂川):大阪府高槻市出身で、いま高校2年です。大阪で開催された「地域みらい留学」※1のイベントに参加したときに、神山校のことを知りました。自分たちでいろいろ決めたり、料理や掃除をしたりして、すごくおもしろそうな寮やなと思ったんです。2DAYS※2に参加して、そこで寮生やハウスマスターとも話をすることができて、神山校を選びました。

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山口璃恩(以下、山口):徳島県美馬市出身で、高校1年です。趣味は川遊び。神山にはじめて来たのは、中学1年のとき。親に連れて来られて鮎喰川を見たときに、この川キレイやなって思って。そのあと何回も鮎喰川に通うようになった。高校で勉強ばっかりするんも嫌やし、普通科に行くんもおもしろくないなって思っていたときに、神山校のオープンスクールに参加して、学校の裏に川が流れてて、その音を聞いて「ここにする!」って決めた。

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井口結衣(以下、井口):静岡県浜松市出身の高校3年です。趣味はギターです。私の兄が大学のゼミで神山に来ていたときに、ちょうど次の年から神山校で県外生募集がはじまるって聞いたみたいで。その話をお母さんづてに聞いたんですよね。私もはじめは「行く訳ない」って思ってて。地元の子たちとは幼稚園から中学校までずっと一緒みたいな感じだったし、県外の高校に行く子なんてまわりにはいなかった。

でも気になって、神山町の役場のホームページを調べたんですよ。そしたら、そこにうつっていた鮎喰川の写真にすごいインパクトがあったのと、デザインもきれいでかっこよくて、興味が湧いたんです。そこで2DAYSの告知を見て、すぐに連絡をしました。

誰も私のことを知らない場所でゼロからスタートしたいなと思ってて。口には出せなかったんですけど、やっぱりずっと一緒にいると自分のキャラクターが決められちゃうんですよね。それがけっこう苦しくて。だったら、本当の私ではじめられる場所があったらいいのになって思って、飛び込みました。

--神山校のいいなと思うことを教えてください。

山口:中学校のときと比べると先生との距離が近くて、気軽に話せるのがいい。先生がおもしろいんもここの魅力やと思う。それから、身体を動かすことが好きやけん、実習で野山を駆け巡ることができるのが楽しいです。

砂川:神山校で特徴的なのは、神山創造学という授業があること。1年生、2年生、3年生でやることが違うんですけど、チームプロジェクトと言って、それぞれがチームになって課題やテーマをひとつ決めて、学生だけじゃなく、地域の人と連携しながら、その解決を目指しながら動いています。地域の人と関われる高校って他にはそんなにないかなと思うし、それが魅力だと思います。

井口:私は神山校3年目で、すごくこの高校が好き。私は環境デザインコースなんですけど、より専門的で実習の時間が増えるんですよ。野外での実習も多い。学校らしくない学校っていう感じがいいなって。先生たちが気さくで、用がなくても職員室に寄ってよくおしゃべりしています。

--あゆハウスはどんなところですか?

山口:ものすごくざっくり言うと楽しい場所。自分と同年代の子や来年も後輩も入ってくるし、いまは先輩もおる。僕は一人っ子やったんで、なんか兄弟がいっぱい増えたみたいな。

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日々のご飯もイベントも自分達でつくる(あゆハウス提供画像)

砂川:他の人にとっての当たり前が自分とは違うなっていうのを感じられるし、それと同時に自分自身がこんな人間だったんかっていうのを発見できる場所。

毎日みんなで集まって、体調のことや明日の食事のことを話し合ったり、一日の感想を言い合うんです。同じ学年で同じ体験をしていても、それぞれ違うことを思っていたりとか、そういうことを感じてたんやって思ったり。人によって大事にしているところも違うからおもしろいと思う。

あとは、2ヶ月に1回、全体会議っていうのがあって今学期を振り返って、どういうことがよかったか、よくなかったところは今後どうしていくのかっていうのを話し合う時間があります。全体会議はより深く他の人の考えも知れるし、全員が真剣に話し合うのでいちばん好きかな。

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全体会議のようす(あゆハウス提供画像)

井口:去年の4月から12月まで、あゆハウスを離れて地元の方のお宅に下宿に出てたんですけど、下宿に出てみてはじめて、あゆハウスのことを考えることが増えた。いつもみんなといるとそれが当たり前のことに思うけど、ちょっと離れたら会いたくなっちゃったり。みんなと食べるご飯ってあんなに美味しかったんやなとか。離れてしまうと味気なくなっちゃって。だから離れられない。私にとってすごく大事な場所やなって思います。

--寮生同士はどんな関係性ですか?

砂川:距離感でいうと普通の友達より圧倒的に近いし、濃い。僕は兄弟がいないから分からへんけど、家族みたいな感じかな。でも、ひょっとしたら家族よりも近い存在。

井口:「うっとうしいけど、愛おしいヤツら」かな。一緒に勉強したり、ゲームしたり、ドンジャラするときもあって。もういいって思うときもあるけど、いないとさみしい。

山口:ひとりだとさみしいよね。

砂川:ここに来てはじめてさみしいって気持ちを知った。ひとりっ子やったし、親が共働きやったからひとりでいるのは当たり前だった。いまは夏休みに実家でひとりになると、うわあ、さみしいなあって。

--ハウスマスターや食育スタッフは、どんな存在ですか?

山口:相談に乗ってくれたり、分からないことを教えてくれたり、一緒にボードゲームして遊んだりとか、友達みたいな感じ。

砂川:頼れる存在です。あゆハウスでは、ご飯会と言って地域の人を招待して一緒にご飯を食べる会があります。そのご飯会をいつもハウスマスターが企画してくれるんですが、今年僕も企画を担当したんです。お金の問題だったり、何時に来てもらうのか、メニューは何で何人分にするのか...。実際にやってみてすごく難しかった。ハウスマスターはさらってこなしているように見えて、かっこいいなって。でも、ちゃんと遊ぶところは遊んで、ちゃんと話し合いのときは場を注意したりとか、そういうメリハリがちゃんとしてて、すごいなって思う。

井口:私は下宿に出てしばらく離れていたので、また戻ってきて生活する不安もあったんですけど、そのときハウスマスターがサポートしてくれたのが大きかった。寮生を信用してくれているんだなってすごく伝わってきた。信じて受け入れてくれたり、時々は外の人とつなげてくれる存在だったり、3年間とてもお世話になった方たちですね。

--神山校やあゆハウスでの生活で、心に残っている思い出は?

井口:1年生ではじめてした田植えがめっちゃ楽しかった。田んぼって生きものの宝庫じゃないですか。生きものが好きで入ってみたかったけど、人んちの田んぼだからずっと入れなくて。神山に来て田んぼに入れて嬉しかった。小さな頃から、お母さんにお米は一粒も残しちゃいかんよって言われて育ってきたんですけど、本当にそうだなって、田んぼで学びました。

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(あゆハウス提供画像)

山口:僕も田植えですね。田んぼに入って全身泥々になって田植えしたのが楽しかった。

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(あゆハウス提供画像)

砂川:イベントも楽しいけど、ただみんなと過ごしてる毎日がすごい楽しい。

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(あゆハウス提供画像)

--いま暮らしている神山は、どんなまちだと思いますか?

山口:ただ通っているだけやったら、表面に触るだけやけど、住んでみたらおもしろい大人も多いし、遊べる場所もいっぱいあって、なんやかんやとまちに関わっていける。まちが大きくないので、チャリで移動しやすいし。基本的に元気があればどこにでも行ける。

砂川:移住してきた人や外国から来た人たちも多いから、英語の勉強にもチャレンジできるし、いろんな経験をしてる人も多いからおもしろい。進路のことを相談しても、いろんな過去の体験や話を教えてくれるので、おしゃべりが止まらないまち。

井口:どちらかというと関わりは移住してきた人たちの方が多かったかなって気がするんですけど、地元の人も素敵な方が多くて。夏休みにコットンフィールドでバイトしたことがあって、地元のおばあちゃんたちがいっぱいいて、お話をするんですけど、おばあちゃんたちの会話ってめっちゃおもしろくて。にぎやかでみんな違うことを言ってるのに笑っている、みたいな。あとは、地元の子たちがまちのことを何でも知ってて、「あの家は○○さんの家」とか「あの家の人は何をしてる」とか、それもすごくおもしろいなって思います。

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--これからチャレンジしたいことがあれば教えてください。

山口:寮の企画を立ててみたい。内面的なことでいうと、もうちょっと先を見据える力をつけたい。こっちに来てから少しは身についたと思うんやけど、まだちょっと後先考えないところもある気がするけん、その力をつけたいかな。あとは元気に過ごしたい!

砂川:いまハウスマスターがやってる、人と人とをつなぐってことを、次は自分がやってみたい。そのために、いまはいろんな人と出会って、人脈をもっと広げたいな。そして、来年は自分の納得の行く進路を見つけたいなって。

井口:大学も無事に決まって安心しているんですけど、またスタート地点だなと思ってます。大きな節目になるなって。でも逆にスタート地点に立つってことは、何でもチャレンジできるから。

神山に来る前は、やりたいことが特になかったから、ここでやりたいことを見つけようっていう目的もちょっと入っていて。自分で見つけた目標を立てて、そのスタート地点に立てることになったから、またここから見つけていくんだろうなって。まだこれってものはないんですけど、新しいまちでいろんなことを吸収したいなって思います。

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※1:北海道から沖縄まで魅力のある地域の高校に入学し、充実した高校生活3年間を送る制度。学校説明会や相談会を開催し、全国に70以上ある高校のなかから留学先を選択できる。
※2:城西高校神山校へ地域留学を検討している学生に向けた、2日間の宿泊型プログラム。神山のまちを巡りながら、神山校や寮の様子を知ることができる。

あゆハウスについての記事「あゆハウス通信」はこちらをご覧ください。
https://www.in-kamiyama.jp/author/ayuhouse/(外部サイト:イン神山)

撮影:植田彰弘
編集:いつもどおり

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