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神山町での子育て政策を引っ張る町長、教育長。
「まち全体で子どもを育てる神山」の背景にはどのような思いがあるのか聞きました。

左から河野町長、高橋教育長
左から河野町長、高橋教育長。

「地域の大人たちが、まちの子どもたちを大事に考えている」。
それが神山町の保育・教育の豊かさの土台。一人一人の思いから、行政の手厚い子育て政策が整っており、里山や鮎喰川の自然もあって豊かな子育て環境がここにあります。

神山町の掲げる「まち全体で子どもを育くんでいく神山」という施策は、どのようなものなのか?神山町の保育・教育政策を引っ張る河野雅俊町長、高橋博義教育長のお二人にインタビューしました。

神山の教育環境を表現するこの図は、令和5年度、現場の先生方を含め、保育・教育関係者の皆さんからのお話をもとに作りあげてきました。改めてこの図を見てどう感じられますか?

神山の教育環境図:「あたたかな人のつながり」「充実した支援制度」「身近にある自然」

河野:実際に、絵が表すようなつながりが神山にはありますね。私が知っている範囲でも、まちの人は大勢が、子どものことを気にかけていますね。家の周りの子どもたちも、近所の人によく構ってもらっている。子どもも、地域の大人との関わりを通じて、自分なりに勉強するんだろうね。声をかけられる時に「あの人はこの話題、あの人はこっちの話題で来るから今度はこう答えよう」とか考えていると孫から聞きました。子どもでも意外と人との付き合い方を考えていますね。

高橋:改めて、町全体で子どもを育てていくイメージが湧いてきましたね。教育は、人的環境(ひと)、物的環境(もの)、自然環境、社会的な環境が大事な要素です。それらが融合しているような図だなと思っています。

中でも「ひと」「もの」の環境を整える政策は、役場・教育委員会の大事な役割ですね。河野町長は今年、1期目。前町長の政策を引き継ぐような形で町政を担っておられますが、子どもの政策をどのように考えておられますか。

河野:特に保育・教育は、重点的に取り組んでいます。子どもは未来を担っていく存在なので、手厚い子育て政策をしないといけない。それは、ずっと神山町が考えてきたことです。今は全国の自治体が子育て政策に取り組み始めていますが、前町長時代から「切れ目なく支援する」ということにこだわってきました。

未就学児だけでなく、小中学校の児童・生徒にもとても手厚い制度になっていますね。

高橋:県下でも一番充実しているのではないでしょうか。町独自の施策で保護者の負担を減らすというのが、神山町の子育て支援の根本になっていますね。給食費の無償化は前町長さんからの提案でしたね。町議会も教育に対して理解があります。

他にも子ども自身が個人で使う教材教具の費用は家庭が支払うのが基本になっていますが、神山町では小中学校とも補助が出る。入学準備金(小中学校入学時に1人3万円)は「入学の時は特にお金が要るから、家庭の負担を軽くしたい」という思いからやっています。まちの子どもの人数が少ないからできる部分もありますが、できるだけより手厚くとは思っています。

高橋教育長

教育長は在任9年目になりますが、どのような観点から施策を行ってこられましたか。

高橋:教育環境のうち「もの」についてお話してきましたが、私が特に力を入れてきたのは「ひと」の環境ですね。昔は神山には優秀な地元出身の先生がたくさんいたんだけれども、今、先生が少なくなっているんですよ。

神山町は山間部の市町村の中でも、比較的徳島市に近いこともあって、異動希望者は結構多いんです。もちろん、県に採用された先生方は県下一円に異動しますが、その中でも神山町に相性が良さそうな先生を配属してもらえるように県に要望してきました。

意識的に良い先生が集まるように、動いておられたということですか。驚きました。

高橋:はい。来てくれた先生が働きやすいよう職場の条件も整えています。例えば、先生方は絶えず研修をする必要があって、いろいろな分野の教育の研究会・団体に所属するんですが、会員費は個人負担になることが多いんです。神山町は数年前から、この個人負担の費用も町で予算をつけて、先生方を応援しています。先生方にも喜んでもらっているようで、こちらも嬉しいです。

他にも、夏休み・冬休みなどの期間に、学校閉庁日というのを他の自治体に比べて多めに設定しています。休み中は当番を決めて日直を置くのですが、閉庁日は日直も置きません。役場は開いているので、学校への連絡は教育委員会に回してもらうようにしています。神山には、秋休み(10月第3月曜・火曜)もあります。原則、部活動も休み。季節のいいときに、児童・生徒が家庭や地域でいろいろな活動ができるようにするための休みですが、先生にとってもゆとりは出ますね。

心身ともにゆとりがあると、先生方も普段から子どもにしっかり向き合えそうですね。では、「神山で子育てをしようかな」と思っている人たちに向けてどんなことを伝えたいですか。

河野:子どもの数は、保育所から中学生までどの年代も、先生からも目が届く人数ですね。神山町には、子どもが、里山や川といった自然にも触れられるし、地域の人とも日常的に温かいコミュニケーションができる。人間性が育つのには、とても豊かな環境だと思いますね。

何もかも整っているよりも、ちょっと山の中で不便だからこそ、子どもが工夫や発想をする余地もあるんですよね。神山まるごと高専の学生が「神山は交通の便もよくないけど多少足りない方が、どう解決するかと考える力がつく」と言っていました。「神山の夜は明かりが少なくて暗いので、周りが明るくなるような何かを発明します」など、不便を解決するためのいろいろなアイディアを彼らも出していました。

河野町長

豊かな人間性のある子どもが育つだろうなと思う環境ですね。そして、少々不便さがある方が、自分で考える力や工夫する力がつくということですね。教育長さんは、どうでしょうか。

高橋:神山の教育環境や子育て支援の様子をよく理解して、「このまま神山でずっと子どもを教育していきたい」と考える町民の人や、神山へ移住をしたいと考える人が増えたら、非常にすばらしいことだろうなと思います。

令和4年に新校舎が完成した神山中学校も将来、クラス数が増えてもいいように、ゆったりした設計にしています。普通クラスが6クラスまでつくれる設計だから、生徒数は、何ぼ増えても大丈夫です(笑)。

神山中学校新校舎
神山中学校新校舎。廊下もゆったりとした広さ。町内産の木材もふんだんに使われています。

自然の中で伸び伸びと育つという点ではどうでしょう。

高橋:私や町長が小さいときは地域に子どもがたくさんいて、遊び場は山や川だった。自然がある中で育つのはいいことだと思いますが、今の神山では近所で遊べる子どもは少なくなったし、昔ほど自然を相手に遊ばなくなりましたね。それが、最近は、鮎喰川コモンができ、子どもたちがコモンにたくさん集まって遊んでいるのを見るようになりましたね。

鮎喰川コモン
鮎喰川コモンに集う子どもたち

「まちのリビング」と呼ばれる鮎喰川コモンでは週末や放課後、色々な学年や学校の子どもたちが、混ざって外で遊んでいますね。夏は虫取りやカナヘビ(※トカゲ)を捕まえたり、冬は雪合戦したり、薪ストーブであたたまったり。

河野:コモンは子どもに人気のようですね。子どもと子どもや、子どもと大人との関係の輪が次々と広がっている感じがありますね。広野・神領小の学校同士も年代も関係なく。

高橋:広野・神領の両校は、学校でも校外活動も一緒にやることが多いですね。消防署の見学や、田植えも一緒にしています。

米栽培の様子
小学5年生は、1年を通じて米栽培をするのが恒例です。

学校や学年を超えた関係づくりは、地域に子どもの数が少ないからこそ、余計に大事ですね。お二人は子どもの数が減少している点については、どうお考えですか。

高橋:学力の面においては、一人一人に目が行き届いた指導ができるので、その子が持っている力をできるだけ多く引き延ばしていく指導は、大規模な学校に比べるとやりやすいとは思います。運動にしろ何にしろ人数が少ないからやりにくいスポーツもありますが、例えばサッカーでもボールが回ってくる回数は多くなり、一人一人の動く量も回数も増えるので経験を積むことができます。

河野:ほんまに先生の目が行き届くと思います。やっぱり一番はコミュニケーションの機会が増えるということですね。人間の才能って、顔も違うように、全てばらばら。人ってどんな分野でいつ才能が開花するか分からない。だから、周りの人から声をかけてもらったり、自分も声をかけたりと、コミュニケーションを図る経験が豊富にあったら、自然といろんなことが上達していきます。人の気持ちを酌み取っていく能力もついてきます。視力で見えないものを、感じ取る力は、社会に出た後、どこでも必要になってきますね。

確かに神山の子どもは温かくてよく気のつく子が多いような印象がありますね。では少し上の高校生以上の話題にしたいと思います。神山町は農業高校が1つ、高専が1つ。専門的な学びができる環境があります。一方、普通科等を志望する生徒は徳島市内の高校へ通います。市内に通う高校生は町内で過ごす時間が少なくなりがちで、そのまま進学や就職で県外へ流出しやすい。その点については、どう思いますか。

高橋:昔は、道も悪くて、徳島市内の学校へ行くといったら神領から奥の人はみんな寮に入るか下宿というのが基本でした。
今は割とこの辺りからでも通学をしているので、小中学校時代に神山を大好きになってくれるような子どもたちがずっと続いて、その子たちが、将来帰ってきてくれたら一番いいと思っています。
ふるさと定住と人口の増加を図るために、町内に保護者が在住している場合は、奨学金の申請ができ、その子が高校・大学を卒業した後、神山に帰ってきて10年間住んだら返還を免除するという制度もつくっています。

城西高校神山校も変化していて、県外からも生徒が来てくれるようになっています。もっと神山校の入学希望者が増えるといいなと思っています。そうすれば神山町からも希望者が多く出てくるのではないかなと思っています。

町内から町外へ通う高校生には公共交通機関の半額補助もあります

河野:子どもたちは小学校、中学校のときにいろんな人と関わって、神山町が好きという気持ちを持っていると思うんよね。僕の同級生で今は県外や外国にいる人たちも、神山町やまちの人のYouTubeやSNSの発信を見て色々なところから電話がかかってきますね。やっぱりみんな懐かしんでくれます。みんな生まれ故郷として、神山がどこか必ず心の片隅にあると思うんだよね。神山で「人に大事にしてもらった」という経験を幼少期から青年時代までに持っている人は、子育て政策の充実を知ったら戻ってくれるのかなと思っています。


充実した子育て政策の裏にある思いが垣間見えた対談でした。次回は現場の先生方のインタビューです。最初は、神領小学校から。地域の人に支えられて、先生方が生き生きと児童に関わる毎日の様子が見えてくるお話です。今回、対談に出てきた教員の働く環境の整備が、子どもの教育にどんなふうにポジティブな影響をもたらしているか分かります。お楽しみに!

「神山での子育て」当事者インタビュー

神山町で子育で教育に関わる人たちにインタビュー

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