【第4話】高木康史さん/NPO法人里山みらい すだち農家研修生

高木康史/NPO法人里山みらい すだち農家研修生
香川県出身、2022年神山町へ移住
第4話は、すだち農家研修1年目の高木康史さんです。
この日訪れた場所は、高木さんが所属するNPO法人里山みらい(以下、里山みらい)の事務所。里山みらいとは、神山すだちの生産やインターネット販売、SNSですだちの使い方を募集する「KAMIYAMA SUDACHI AWARDS」などを行うNPO法人であり、すだち農家のための研修機関でもあります。里山みらいの研修生は最大2年間、神山町での研修を通して、すだち農家に必要な知識や技術を身につけていきます。
今回は、里山みらいでの援農アルバイトを経て、2025年から研修に参加している高木さんにすだち農家研修についてお話を伺います。
わしの畑を受け継がんか すだち農家研修のはじまり
援農アルバイトを含めると、すだちに関わり1年が経つという高木さん。2年目の収穫を目前に「今が一番暑いけれど、農家の皆さんが一番本気になる時なので頑張っていきたい」と話すときの眼差しは真剣です。
神山町への移住は、水が綺麗な場所に住みたいという夢を叶えるためだったと言いますが、高木さんはこのまちで暮らす中で、すだち農家になるという新たな目標を見つけました。どのようなプロセスを経て、すだち農家研修を受けることになったのでしょうか。
高木 里山みらいの援農アルバイトに通っていた2024年の夏頃、自宅から里山みらいの事務所へ歩いている時に、近所のおじいさんに声をかけられました。「今すだちのアルバイトに行ってるんです」と会話していたら、そのおじいさんから「わしの畑を受け継がんか(受け継がないか)」と言われたんです。 その時は、畑をやっていくのは大変なことだと思うし、人の畑を継ぐのは自分にできるかどうか実感が湧きませんでした。
そこで、里山みらいに相談したら「研修を受けてすだち農家になって、やったらいいじゃん」と、結構ポジティブに言ってくれて。食べ物に関わる仕事をやっていきたいなと思っていたんで、そこでつながったなっていう感じがしました。 自分にできるかどうかは分からないけど、すだち研修をやってみようかなと思いました。

里山みらい事務所
ー神山にいる人々との出会いの積み重ねが研修を受けるきっかけになったんですね。以前から食べ物に関わる仕事に関心があったんですか?
高木 幼少期から食べることが好きで、祖父から食べ物の大切さについて教えてもらいました。 当時アレルギーはそんなに認知されていなかったんですけど、 家族がサバのアレルギーを体験する中で日常的に食べているものについて疑問に思ったこともあって。社会人になって食品会社に入ってから、より一層食べ物について詳しく知るために勉強しなきゃいけないなと感じるようになりました。その後、栄養士の資格を取って、B級グルメの屋台出店から商品開発など食べ物に関わる仕事をしてきました。
ー高木さんにとって、食べ物は大きなテーマなんですね。実際にすだち農家研修では、どういうことをされるんですか?
高木 畑やすだちの木の管理、実の採り方、剪定の仕方などを学びます。特に剪定の仕方1つで、品質と収量が変わってくることは、すごく奥が深いなと思いました。 いろんな農家さんの畑を見ても、いろんなやり方や特徴がありますよね。
基本だけ知ってても、自分の畑に活かせるかどうかというのは分からないので、この間は里山みらいに相談したうえで、下分の農家さんのところに行って、摘果摘葉のやり方を見せてもらいました。人がやって成功しているさまざまなお手本を見れるっていうのはいいなと思いましたね。

もっといろんな方の園地を見に行って勉強したい 研修の日々
最近の新しい発見を聞いたところ、「水分を取らないとちゃんとやっていられないと思うほどの暑さ」と答える高木さん。気候の変化にもついていくために、農家としてのあり方も見直し続けなければいけません。すだちに関わって1年経ち、今どんな風に感じていますか。
高木 今年は暑いのは暑いですけど、その分すだちを育てる上で何かあったときの対処法を見れる機会でもあると思っています。 たくさん蓄えていった方が自分の身になると思うので、どれだけ多くの対処法を理解して、これから自分一人でやっていけるか?を考えることが、今後の僕のテーマです。
同時に1人でできないところも、自分の中で見定めていかなきゃいけないなと。 規模によっては、アルバイトの方にも来てもらうこともあると思います。 もっといろんな方の園地を見に行って勉強したいです。

ー今、研修で里山みらいのチームの中にいたり、いろんな農家さんと繋がったりする中で、神山町の人たちにはどういう印象がありますか?
高木 今は里山みらいの関係している農家さんとの関わりが多いのですが、「見に行きたいです」といったポジティブなお願いに対して、皆さん寛容で「いいよいいよ。来たらいいよ」と言ってくれたりするので、そういうところが温かいなって思って。
神山のすだち農家さんは作業を始めたら、集中して職人気質になっていくというか。環境や木の状態、 雨の状況みたいないろんな情報をすぐに察知して、そのときどきで対処していっているんじゃないかなっていうのを思うので、その感覚をもうちょっと聞きたいです。
ー今、すだちをつくっていていいなと思う瞬間はどんなときでしょうか?
高木 自分でつくったすだちを自分で食べることは、本当に贅沢なもんだなと思っています。自分にとって、美味しいものを食べた時の幸福感ってとても大事。その土地の食べ物のルーツや料理、風習、歴史、文化もまとめて、美味しさになるんじゃないかと思っています。
水がおいしい神山町で育った作物は、さらに美味しいし、価値が高いと思うので、これから皆さんにも味わってもらいたいし、さらに理解してもらえるところまでいきたいなと思っています。

事務所スペースで行われる買い物支援「ちょっとわて」で地域の方と交流する高木さん
ー将来、すだち農家としてこうなっていきたいというビジョンはありますか。
高木 すだち農家になったら、まずは畑をしっかり見て、そこの畑から何ができるかを考えていくべきかなと思っています。そのためには、すだち畑をうまく管理して、いい実がなるように持っていけるか?収穫量が少なかったら、それに対してどうしていくか?と考えていくことが、今の自分がすべきことだと思っています。
また、最近は鹿が本当に多くて、いい状態の木が食害に遭うと弱ってしまいます。去年の冬、里山みらいの園地にも鹿が侵入するという事件があり、フェンスを設置しました。罠の狩猟免許を取ったので、冬の農閑期に鹿を駆除しながら、すだちの食害を防いでいきたいです。
高木さんおすすめ!すだちの食べかた
最近は里山みらいでつくっている、すだちシロップのかき氷を食べています。夏場の園地はとても暑いので、作業した後に食べると体が一気に冷えて、疲れが取れる感覚があります。
