神山はいま

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地域に育まれた神山の観光の現在地と、これから目指す方向
「外から見ると、『豊かだな』って思うものが沢山ある」

平成30年12月26日

今回は、神山町役場産業観光課の高橋成文さん、道の駅で働く岡田和子さん、粟カフェのオーナーであり、NPO法人グリーンバレーの理事長も務める中山竜二さんの3名にお話を伺いました。メディアに取り上げられることも増え、移住者や視察者が増加している神山は、これからどのようにして町を知ってもらい、訪れ・楽しんでもらえば良いのでしょうか。お話を聞かせていただきました。

観光のカタチが変わってきた

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高橋さん(以下 高橋) 役場に入ったんは20歳のときで平成4年。平成4年と言えば、グリーンバレーの前身の『国際交流協会』や阿波おどりの『桜花連』ができた年。

中山さん(以下 中山) メモリアルですねえ(笑)。

高橋 役場入ってからは、広報・企画・観光とかの係をやってる期間が長いですね。観光に関してはトータルで10年以上になります。最近は、移住やサテライトオフィスの対応、あとそれに関係する取材の対応が多いかな。まあ課題も沢山あるし、町自体にも新しい動きもあるんで、いろいろと考えてる途中って感じですね。

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岡田さん(以下 岡田) 私は中学校まで下分で暮らしてました。幼かったこともあり、大体が学校と家の往復で、町のこともよく知らないまま(笑)。それで、高校進学のタイミングで市内に出て行き、そのまま就職しました。神山に帰ってきたのは道の駅ができたとき。それから17年くらい、道の駅で働いています。

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中山 神山に来たきっかけは、2008年に徳島新聞に神山の特集記事が載ってたんがきっかけ。当時、僕は高松で営業の仕事をしてたんですけど、そろそろどっか田舎で暮らしたいなあって思ってたところで。それから古民家を買って引っ越してきたのが2010年。今は、粟カフェを経営しながらグリーンバレーの理事長をやらせてもらっています。

高橋 まだそんなもんですか。もっと長いことおりそうやのに(笑)。

中山 元々の住民みたいに思われることも多いんだけど、縁もゆかりもない生粋のIターンです(笑)。

ー現在、神山の観光はどのような感じでしょうか?

高橋 神山って、元々そんなに観光に特化してる町じゃないと思うんですよ。作られた箱物の観光地があるわけでもないし、大型バスがどんどん入ってきて物産品を買って帰っていくような所でもない。あるとしたら焼山寺くらいでしょ。それ以外では、そんなに大量に人が入ってくることはなかった。

ただ、昔から地域のことは地域の人で盛り上げるというか、そういう取り組みは沢山やってきてるんですよね。お祭りもそうやし道路の清掃活動、あとは桜や花を植えてみたりとか。地域の暮らしを楽しみながら大切にしてる。

それにプラスして、町内の地域間で競うような風習もあって。例えば、隣の地区で花火あげよったら、うちはもうちょっと大きいんをあげようか、みたいな(笑)。旧村の区割りで競い合いながら楽しむ文化みたいなものも、神山にはあると思うんよね。

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昔からのそういった慣習を特に何か変えるわけでもなく、元々ある地域資源をうまく使って人を寄せとんよね。それにようやく道路事情が追いつき、人が集まるようになってきた。
そんな感じで、なんか昔の田舎らしい雰囲気の延長にあるんが「神山の観光」っていう気はしとんですよね。

岡田 道の駅は、やっぱり桜の時季には駐車場に車が入りきれないくらい観光客の方が来られるんですよね。それは『神山さくら会』さんとかが一生懸命桜を植えてきてくれたおかげでなんですけど。あとはお遍路さんもかなり多いと思います。特に外国人のお遍路さんはここ数年で格段に増えました。

ただ神山の観光は、色々な名所があってお土産物屋さんがずらっと並んでっていうものとは、また違うじゃないですか。高橋さんも言うたように、民間で頑張りよる人が作ってきたというか。道の駅としては、そういう人たちをやっぱりお手伝いしていきたいので、これからはどんどん情報を教えてもらえたらと思っています。

高橋 ちなみに桜の時季に道の駅に立ち寄る人の数は、ここ数年3万人。今年は桜が咲いとる期間がちょっと長かったけん5万人。少なくとも、ですよ。

岡田 すごいですよね。

中山 僕は、神山にはコンテンツが沢山あるなあっていう印象なんですよね。山もあり川もありで、自然はやっぱり素晴らしいでしょ。食べ物も良いわね。人もそう。よそから来た人も地元の人も、ユニークな人が沢山いますよね。それに祭りも歴史も文化もある。
「神山に何がありますか?」って聞かれたら、山のように出てくる。

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中山さんがメモ書きした神山のコンテンツ一覧。地域やジャンルごとに分けられている。

昔の観光っていうと「パンダ見に行きましょう!」とか「東京タワー行きましょう!」みたいだったでしょ。けれど今は「棚田行きましょう!」とか「川に足をつけに行きましょう!」っていう感じで、少しずつ観光のカタチが変わってきてるような気がするんよね。

幅が広がったとでも言うんかな。

岡田 多様化したんでしょうね。特に若い人たちはそうですよね。

中山 そうやねえ。ほんで、もっと地元の人と話がしたかったりね。

高橋 「作られた観光」よりも、「自然にあるものとかそこに住んでる人」とかに集まって来るような。急にそういう傾向が強くなりましたよね。

中山 外から見ると、「豊かだな」って思うものが沢山あるもんね。僕も移住して間もない頃は、朝起きて鶯が鳴いてるのに感動してたからね。今はうるさいなって感じだけど(笑)。

高橋 何年か前に誰かが言うとった。神山はインフラとかの開発が遅れて、そんなに観光地化せんかった分、田舎が注目されとる現代では周回遅れのトップランナーやなあって。最下位行きよったんが、いきなり先頭に立ったみたいな。たしかにほうやなあって思ったね(笑)。

情報を伝えられる体制が整っていない

ー課題はなんでしょうか?

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高橋 高齢化して、だいぶ地域の人の元気が衰えつつはありますよね。僕が役場に入ったときから、現役で頑張っとる人って変わらんのやもん。世代交代ができていない。

岡田 たしかにそれはすごい感じますよね。お手伝いするような若い人がおらんから。
今、お花とか植えて盛り上げてくれとる人もおるけど、その人たちが高齢化したら手入れができんようになる。自然が良いっていうても、ある程度は整備していかんと「里山」がただの「山」になってしまうけん。それでは値打ちがないでえね。

高橋 結局人がおらんかったらあかんもんね。そこをどうするかやなあ。

中山 コンテンツはいっぱいあるってさっき話したけど、それにアクセスする方法がなかったり、知られてなかったりっていうのはあるわなあ。そういう所はもったいないよね。

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岡田 道の駅にいると、お客さんから「今、何が見頃ですか?」とか「どこに行ったら良いですか?」って沢山聞かれるんですよ。ただどうしても、行ったことがある人とか慣れとる人じゃないと説明してもきちんと伝わらないんです。それって結構難しいんですよね。
でも、道の駅に来るお客さんは「道の駅に行けば何でも把握できるだろう」って思っとる人がほとんどなんですよ。全部答えれんかったらお客さんが許してくれない(笑)。

高橋 ほなから、情報発信の仕方っていうんは一つ課題でしょうね。これだけ全国から人が来るようになった割には、役場とか町内の観光に携わる人ってあんまり昔から変わってないんですよ。情報の出し方や対応の仕方自体もそうやけど、もうそろそろ今の状態は限界。

ローカルなネタも含めて、ある程度の情報は役場も持っとるし、道の駅とか民間の人も持っとるけれど、まだまだ一元化はできてなくて。まあ言うたら、ちゃんと伝えられる体制が整ってない。やけん、神山の観光の情報をちゃんと伝えられる案内人とか問い合わせに対応できる窓口が、やっぱり必要なんかなあっていうんは前から思っとんですよね。

そういう思いもあって、2年前くらいから休みの日だけやけど、サイクリングガイドを仲間と始めたんですよ。それで、やってみたらものすごい反応が良くて。お客さんの反応も良いし、立ち寄る店とかの人の反応も良いっていうのがすごく分かって。

中山 満足度が違うよね。

高橋 そう。ガイドと一緒やったら、そこに住んどる人とも直接話ができるし。やけん、そういう役割ってやっぱり必要やなって思ったね。
で、やるんやったらボランティアでは駄目。それである程度お金を生み出さんかったら。

岡田 地区ごととかに、そういう所があったら良いんかもしれないですね。行っきょる途中で分からなくなったらそこに寄ってください、みたいな。

「神山の観光」を議論する場があれば

ー今後の展望はありますか?

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中山 ここ数年、視察者もすごい増えてきてて、多ければ年間3,000人くらい来てるんだよね。で、視察っていうのも一つの観光と見ることもできて。だから、グリーンバレーとしての次のステージは視察で来た人たちを日帰りで帰らさずに、一泊してもらって別のコースメニューを提供できるようになれば良いのかなって思っています。

そしたら、その分地域にお金も落ちるし、逆に普通に観光に来た人にサテライトオフィスを巡る視察みたいなんも提供できたりもするし。そういう広げ方もあると思うんですよね。
道の駅には、視察の方々は来られますか?

岡田 何年か前までがピークに多かったかな。まあでも、視察の方たちはお土産を沢山買ってくれるので、すごくありがたいです(笑)。

高橋 確実に買うもんね(笑)。

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岡田 さっき言ってたサテライトオフィスを見学したいっていうんは、個人のお客さんでも結構いらっしゃって「どこ行ったら良いですか?」って道の駅に聞きにくるんです。そういうとき、一応場所は言うんですけど「皆さんお仕事されてるんで、外観くらいしか見えないですよ」とは伝えてて。

高橋 役場にもよく問い合わせ来ますよ。役場としては、コンプレックスだけは見ても良いですよって返事しよんですけど。コンプレックスは町の施設やし。

岡田 コンプレックスも仕事しよったら邪魔かなあって思うんですけどね。

中山 今、結構問題になってるのよ。視察者が多くて仕事にならないって。だから、そういうのもどこか窓口を作って、一括で管理できるようにならないかんね。例えば、道の駅にコワーキングに関するチラシを置いとくとかでも違うかもしれん。

高橋 オープンデーみたいなんがあっても良いかもしれん。月に1日だけでも、何時から何時まで見学OKみたいな日を作るとか。

岡田 そういうのは良いですよね。

中山 行政的には、神山の観光を今後どうしていくのかみたいな施策はあるんですか?

高橋 そうなんですよ。計画とかがないんよな(笑)。

中山 ほうでしょ(笑)。

岡田 (笑)。

高橋 神山みたいな規模の町で、観光を推進するために5ヵ年とか10ヵ年で計画を立てとる所ってまずないんちゃうかいな。聞いたこともない(笑)。でも、これからはそういうんも必要になってくるかもしれん。

中山 行政と地域活動団体、あとはタクシー会社と道の駅と温泉。そこらへんが一回皆で集まって、これからの「神山の観光」を議論する場があれば良いかもしれんね。皆で課題を共有する会をひらく。
でないと、皆バラバラで広報してもしょうがないでしょ。

高橋 たしかにほうやね。ほなけん、情報の一元化と上手な発信っていうんを、ある程度ワンストップでやっていった方がええような気がするなあ。

中山 地域のまちづくり団体も、PRする力は弱いじゃないですか。だから、そこをサポートしてあげたり、準備に人を集めてあげたりしたら、また違うと思う。そこをコンセンサスとってやっていけたら良いなあって。

岡田 これからは、皆で盛り上げていかないと駄目ですよね。

 

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