神山はいま

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上分出身の男性が営む、自転車レンタル店兼カフェの取り組み
「ここが秘密基地であり、遊び場やね」

平成29年 3月30日

大門康介さんは、神山町上分の出身。徳島市内で仕事をしながら、実家の製材所にオープンした『カフェブロンプトンデポ』を運営しています。今では、県内外から多くの人が訪れるようになったこの場所は、どのようにして始まり、どんな形で進んでいるのでしょうか。お話を聞かせていただきました。

周りは遊び場ばっかりでした

大門さん(以下 大門) 大門康介です。1972年生まれの45歳。
神山町の上分出身で、上分小学校、上分中学校に通いました。
今は、両方ともありません。

小学校の時とかは、遊ぶものがなかったけん、
学校終わったら、ここらへんの自然でずーっと遊んびょったね。
学校からの帰り道は、普通の道を通らんと、あえて山を歩きもって帰って。
途中で柿とか色々食べたり、わらびを山で採って売ったりね。
300円くらいで売れるんやけど、300円でお菓子買うけん何も残らないみたいな(笑)。

川もよー行ってましたよ。
アユとかアメゴとか、あとウナギも捕れてたんですよ。
神山みたいに、上から下まで綺麗な川は他にないですね。
水もよく透き通っとって、魚も綺麗し。

そういう遊びは、ホンマに楽しかったねえ。
アウトドアが好きやけん、周りは遊び場ばっかりでした。

高校は、徳島市内の高校に行って、下宿しよりました。
そん時は、お盆と正月に帰ってくるくらいで、殆ど市内でおったねえ。
部活したり、普通に友だちと遊んだり。ほれはほれで面白かった。

ーその頃の神山の印象はどういったものでしたか?

ちょっと人が減りかけよんかなあって感じ。
ゲームして遊ぶ子が多なったけん、
外で遊ぶ子どもをあんまり見んようになったんかな。

まあでも、なんていうんだろう。
自分からしたら故郷やし、勿論、嫌いでもないんやけど、
別に特別な思いがあるわけでもなかって。
「静かな町で良かったなあ」っていうくらいで。

製材所だった場所には、今でも多くの木材が置かれている。

高校卒業してからは、広島の方で1年半だけおって、
その後に、実家の製材所に帰ってきました。

「家を継ぐ」とかそういうんではなく、
最初は単純に手伝いよっただけだったんですよ。
やっぱりね、こっちには友だちもおるし、就職先もほないなかったんで、
ズルズルとみたいな感じで。

移動を点じゃなくて線にしたら、もっと良さが分かる

大門 自分が30歳の頃に、一度、製材所は閉めたんですよ。
それからは、自分も市内の方に仕事に行くようになって、
神山に来る機会も少なくなっとったんやけど。

ただ、製材所を閉めるちょっと前から、
両親が木の小物とかを売ったりしよったんですよ。
父親がそういうんを作るん好きだったんでね。

それで、ちょうど今から1年前くらいに、
建物の屋根が傷んできとったんで、修理しようということになってね。
で、どうせ修理するんやったら、いっそ屋根も赤色で派手にして、
なんか新しくお店でもしようかっていうことになったんです。

それで、ブロンプトンっていうイギリス製の自転車の、
レンタル屋兼カフェでもやってみようかっていうんで、
『カフェブロンプトンデポ』を始めたんです。
ちょうど自転車も流行り始めとったし、
自分も昔から自転車乗っとったんもあったんでね。

ブロンプトンにした理由は、一番はオシャレなこと。
あとは、ブロンプトンってどれも20万円くらいするんですよ。
そんな高い自転車って、レンタルとかではなかなか乗れんでしょ。
やっぱり神山の奥でやるんやったら、そういうインパクトがなかったらあかんと思って。
まあ自分がブロンプトンを欲しかったんもあるんやけど(笑)。

ガイドツアー時の様子。

ーどういうスタイルで営業されていますか?

大門 今は、カフェの営業と、自転車の貸出しをガイド付きで1,000円でやっています。
上分から道の駅くらいまでの大体30キロのコースで、ちょうど1日遊べるくらい。
今は綺麗な道がよーけできたんで、逆に昔の道があいてきたんですよ。
ほこ走ったら、あんまり車と接触せずにストレスなく走ることができて、
ええかなあと思ってね。

最近は、移住者の人の店でお弁当買ったりお茶したり、皆とも連携しながらやってます。
自転車のいいところは、行くまでにいろいろ楽しめるところ。
車だったら一瞬の所も、ゆっくりと見てもらえるんで。
移動を点じゃなくて線にしたら、また神山の良さが分かると思う。

お客さんは、県内外から来てくれてます。
ブロンプトンを売っとるお店の人とかミニベロを専門に扱いよる店の人とか、
色んな人の口コミで広がっていった感じです。
あとはfacebookとかで宣伝もできるけん、そういうんを見て来てくれる人もおるし。
勿論、ブロンプトン以外の自転車乗りの人も、休憩がてらカフェの方には来てくれますよ。

こないだも、京都から来てくれた人がおったんですけど、
年明けに僕らが逆に京都に行って、その人に観光案内をしてもらって。
そういうふうに、色んな人とゆるやかに繋がっていけるんはいいですね。

同級生はホンマにええね

ご両親と。平日のカフェの切り盛りは、お母さんが担当している。

この日は、箸づくりワークショップが開催されていた。

大門 最近は、ここでワークショップをやったりもしてます。
製材所しよった時の機械もあるし、木は沢山あるんでね。
ブロンプトンを乗りに来た人が、
「ほんなんあるんだったら、また来ます〜」って言ってくれて、
ワークショップにも顔出してくれてます。

ワークショップとか自転車のガイドとかは、
同級生の仲間がボランティアで来てくれるんですよ。
皆、自転車に乗りたいっていうんもあるんやろうけど、
やっぱりここに来たら色んな人に会えるけん、楽しんでしてくれよるんでね。
同級生はホンマにええね。気楽やし、喧嘩もせんし。

皆、それぞれにブロンプトンを持っとるんですけど、
自転車がレンタルされたら、その人にレンタル代が入るようになっとるんです。
やけん、自分が使いたい時は自分でも使えるし、
レンタルされたら、車両費がちょっとだけ賄えるっていう仕組み。

元々、自分が自転車始めたんも、
同級生に「自転車乗ってどっかいけへんで?」って言われたんがきっかけなんですよ。
もう20年くらい前になるんかなあ。
皆でここらへんの山を走り回ったり、フレーム買って自分たちで自転車組んだり。
そうやって仲間で楽しいにやりよった所に、結果的に人が集まっとる感じですね。

商売っ気がないかもしれんのやけど、
自分もそうやけど、皆、それぞれで仕事しよるけんね。
ここでがっつり食べていこうっていうんじゃなくて、
まあちょっと、生活の足しになればええかなあっていうくらいです。

でも、ここの建物もほない投資はしとらんのでね。
扉も窓も照明も、全部自分でしとるし。
誰かに頼んでしてもらったら、お金もよーけかかったかもしれんけどね。
やけん、まあ肩肘張らん感じでやってます。
多分、がっついたらお客さんも減る気がするしね(笑)。

少ないは少ないで、別に楽しい

主にブロンプトンデポに関わる4人。左から鍛さん、高橋さん、大門さん、宗本さん。

ー最後に、今の神山町の動きをどう見ているか教えてください。

大門 んー、別に特別な思いはないんやけどね。
ほらまあ、店をしよる以上は、
人がいっぱい来てくれるにこしたことはないんやけど。
少ないは少ないで、別に楽しいしね。

人口が減っていくことに対して、悲しいとかもそんなにないし。
神山におりたくても、仕事がなくなったら出ていかなあかんけん、仕方ないでえね。
こっちに大きい企業があるわけでもないし。

けど、もし大きい企業ができたりとか、
例えばここにダムとかができたりしたら、
人は来るんだろうけど犠牲になるものも大きいかもしれんでしょ。
排気ガスとかも多なるかもしれんし、ゴミも増えるかもしれん。
ほれよりは、このままでいいと思う。今の山のままで。

まあでも、
今、神山が有名になってきとるけん、そこに乗っかっていくじゃないけど、
なんかうまいことやったら、どこでやっても一緒かなとも思うけど。
神領まで人が来てくれとるんだったら、上分にも来てくれるだろって思うけん。
そういう感じでええんちゃうかな。

まあ自分やは、週末になったらここに集まってきて、自転車に乗って皆で遊んで、
「次はあれしよかこれしよか」っていう感じでやりよったんが、良かったんかもしれん。
ここが秘密基地であり、遊び場みたいな感じやしね。

やけん、来たい人が神山に来てくれたらいい。
今、来てくれよる人も面白い人はよーけおるし、
よそから来た人の考えって、やっぱり地元の人間とは違う視点があるけん、
いいなあって思うし。
やけん、色んな人がおる今の神山は楽しい。ネガティブに考えたら、損やね。

 

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